「期待の新人監督」受賞結果発表!

「期待の新人監督」
受賞結果発表!

今年は89作品の応募作の中から22作品が選ばれ上映されました。
その22作品の中から勝ち抜いた作品を発表します。

期待の新人監督賞
『ハングマンズノット』

審査員:小野寺 私から作品評を言わせていただくと、本当に単純なんですけども、次回作を一番観たいと思いました。グランプリです。頑張ってください。
監督:阪元裕吾 言葉が出ないぐらい本当に嬉しいです。色んなことを考えて、楽しんで作った映画ですね。とにかくこう、面白いことは何だろうって考えて、楽しませる方法を考えて、お客さんを。それで、結局僕らも楽しんでやってて。でもこの瞬間のために生きていられるんだなっていうぐらい本当に嬉しいです。すいません、もう全然言葉が見つからなくて申し訳ないです。ありがとうございます。

出演俳優賞
『ハングマンズノット』安田ユウ

審査員:平山夢明 俳優賞ということで、俳優さんの仕事って映画の中では、すべて引き受けないといけない。現場っていうのは、実際問題、現実の中で虚構を作っていく作業になりますから、物凄く難しいものです。もう一つはキャラクターのメンタルを一定に、ずっと繋げていくということはなかなか難しいわけですよ。月曜日撮ったあと、火曜日が来て、金曜日が来て、その間色々なことが起きる。その中でも、深くキャラクターというものが、この世界の中で、どの要素を作ってるのかということを絶対忘れない。それって台詞を覚えるとか、そんな簡単なこと以上に重要なことだと思うんですけど。それを彼の場合は非常に身体的に強く表現したっていうことで、観客の目をですね、釘付けにすることに成功したっていうことを僕たちは多分に評価しました。おめでとうございます。
主演:安田ユウ 何を言うのかちょっと忘れちゃったんですけど、僕ってずっと劣等感でお芝居やってて。誰かに劣ってて、環境とかにも凄い弱くて。結構昔とか、悪い事とかもしてて、初めてこういうキャスティングしてもらって、ハマって、良い芝居が出来たというのと、監督や、一緒に出ていただいた人たち、そしてスタッフの皆さんにこの場でお礼を言いたいなと思います。ありがとうございました。家族も来てたんですけど、昨日で帰っちゃって、授賞式を見せられなかったなって。次に繋げていきたいなと思ってます。ありがとうございます。

観客賞
『はりこみ』

審査員:田井肇 個人的に僕はこう思いました。観客賞を獲ったのは、多分監督のキャラクターが面白かったからなんだろうと思いました。観終わったあとに監督を見て、それで「あ、いいな」と思ったんじゃないかと思うんですけども。僕の個人的な思いは、これの次のバージョンを作っていくというようなお話をしてらっしゃいましたけども、僕は是非これをそのまま長編にしてほしい。つまり、皆さんご存知か『ストレンジャー・ザン・パラダイス』っていうジム・ジャームッシュの映画は最初の30分だけが最初に作られたんですね。ほぼ完成してるにもかかわらず、そっからもう一時間作り足して、長編化してるんですね。なので、こっからこれの続きを、とんでもない飛躍をして、作り足して、長編にしていただけるとありがたいなというのが僕の願いです。
監督:板垣雄亮 ありがとうございます。色々事情があって、共演者も来れなくて、私だけ来たんですけども、獲るんだったらやっぱり、実際に観ていただいたお客さんにこうやってもらう賞が凄い嬉しいので、感無量でございます。実際に観ていただいた方に評価していただいたということを、東京に帰って、皆に報告したいと思います。あと、期待の新人監督ということで選ばれて、今回観客賞をいただいたんで、これからも何か撮らなきゃいけないなって考えてます。ありがとうございました。

のびしろ賞
『アマノジャク・思春期』

審査員:平山夢明 『アマノジャク』に関してはですね、徹頭徹尾ゼロから百までがオリジナルであったということが僕の胸には非常に強く映りました。それともう一つですね、非常に難しいんですけども、子役さんにですね、あそこまで徹底した演技を破綻なくさせる演出力というのは僕、ちょっとビックリしました。十分にのびしろがある、力もあるなと、この監督には思いました。それとシーン毎にですね、必ず決めなくてはならない印象的なカットですね、次に繋げなくちゃいけないところを非常に彼、考えて、ありきたりではない、かといってキテレツなところに流れないもので作っていただいたっていうのは僕は非常に感動しました。今回は監督の体験談の映画化だったので、できれば次回はそれに依らない完全オリジナルでまた頑張っていただければと、そして、長編を作られることを期待しています。
監督:岡倉光輝 主人公役のアヴァンセ所属の山本楽君や山王プロダクション所属のヒロインの千野羽舞さんにも、あとキャストの方々、スタッフの方々に相当ご迷惑をおかけして、作り上げた作品なので、授賞できて嬉しいです。本当にありがとうございます。

ぶんまわし賞
『FILAMENT』

審査員:平山夢明 『FILAMENT』に決めたきっかけはですね、僕のほうとしては、色んな自主映画の、まあ自主映画というかこういう作品が多い中で、かなり撮影現場のほうで、手間と危険な部分も省みず、一生懸命やられていたというのと。あとやっぱり、一つ一つのシチュエーションを非常に上手いところで切り取ってですね、全体の構成を広げてるというところを買いました。こういう特撮映画的なものにありがちな、“パーム漏れ”っていうんですね、手品なんかで隙間が見えちゃう部分が見られなかったということで。ストーリー的にはですね、非常にオーソドックスなところだったんですけど。次回は是非、刺激的なもので、あのノリでやっていただければなと思って。まあ、これは“ぶんまわしてる”なと。
監督:田中大貴 ぶんまわし賞ありがとうございました。そうですね、本当にヒーロー映画っていうのは、なかなか日本では作られる方が少なくて。特に特撮じゃなくてアメコミに寄ったヒーロー映画というのは、本当に作る方も少ないので。こうやって賞をいただけて、大変嬉しいです。観ていただいた方はありがとうございました。

次回を手にするその日まで賞
『自由を手にするその日まで』

審査員:田井肇 僕は先ほど申し遅れましたというか、申さなかったんですけど、実は大分で劇場をやってるんです。映画館を二つ持っているんです。僕の視点はもう凄い単純で、自分の映画館で、コヤでかけてみたいなと思う映画はどれかっていう視点だけです。だとしたらどれかなっていうので、非常に正直に言うと自分の映画館でかけてみたいなと思った唯一の作品です。ということで、この賞を差し上げます。
監督:天野友二朗 もう賞を取れないんじゃないかと思っていたので、本当にこういうステキな賞をいただけて、本当にありがたい限りです。一生懸命頑張ってくれたキャストさんたちもいるから、その人たちの姿をやっぱり劇場にかけたいし、それを最後までやり抜くことが監督の責務だと思ってるので、これからも闘おうと思います。
主演:みやび 主演を務めさせていただきました、みやびと申します。この度は、この素晴らしい特別賞をいただきまして本当に感動しております。やっぱり、劇場の視点でかけたいと仰っていただけるということは、本当に映画にとって凄く価値のあることだと思っていますし、演者としても、とても誇らしく思ってます。ありがとうございました。

総評

審査員:平山夢明

本当に授賞をされた方、おめでとうございます。今回、授賞をたまたまされなかったという方、お席にいらっしゃると思うんですけども。僕はですね、常に今、映画業界というのはですね、アマチュア、プロにかかわらず非常に厳しい状態だと思います。これでウキウキ浮かれながら生きていけるなんて人は1人もいない。こういう状況はですね、もう既に20年、30年続いている中で、あなたたちですね、授賞された方もそうですし、授賞されなかった方もそうですけど、非常に勇気がある。それはかけがえのないものだと思いますよ。芸術に対してですね、自分の時間と人生と、ある時には家族の生活まで叩き込んでですね、何がしかのことを成そうとするその精神に僕は本当に感動します。それで、今回89作品の中で、22作品残ったということを考えていただければ、この舞台に立って授賞していないということは、何事の瑕疵にもならない。完全に最後まで作って、それを公開する形っていうのは、人に観てもらう形にしたということだけでも、偉大なポテンシャルは持っていると思います。

また、今回授賞した作品もですね、それぞれ完全ではありません。あえてグランプリを獲った『ハングマンズノット』に関して言わせてもらえばですね、やはり後半の処理が非常に問題だったということがありますし、また『自由を手にするその日まで』に関してはですね、メインキャラクターの女性がイジメをされたことをリベンジするという話ですよね。問題になったのは何の点かと言いますと、メインキャラクターが最もその作品の中で、果たさなければならないことを、他者に委ねるというのはどうなんだろうと。そこは少し考えていただきたいんですね。やはり、とても困難だと思うんですよ、1人の女性がリベンジを行うというのは、到底考えてもあり得ないじゃないですか。でも、そこが売りになる。そこにもう一つ工夫をしてもらえれば、文句なしだった可能性は非常に高いです。

ですから、そのように完全な作品はないです。どこにもありませんので、こういうところはダメだったとか、ああいうところをもっとこうすればよかったという思いは皆さん持ってらっしゃると思いますけど、決してそれでですね、もうヤメタということを皆さん仰らないでいただきたいなというのは、僕や小野寺さん、田井さんたちの思いです。とりあえず、皆さん「期待の新人監督」に参加していただいて、本当にありがたいと思っています。僕も物をちょくちょく書いたりしてますけども、エネルギーをたくさんもらいました。ありがとうございました。

審査員:田井肇

自分の映画館だけで年間2百本くらい上映してるんですけども、これだけたくさんの映画を一気に観るということはあまりなく、しかも先ほど言いましたように基本的には商売の人間ですので。こういう言い方は乱暴ですけど、素人さんが作った映画をいっぱい観なきゃいけないのか、参ったなというノリで来たんですが、正直皆さんの作品のクオリティの高さにはビックリしたんです。だから、本当にデジタルというものにも依ってるんでしょうけれども、本当に今やプロとアマチュアの境目は全然ないですね。全然ないし、これは僕も、僕と同じような劇場の友人や仲間をいっぱい知ってますけど、やっぱり僕らも何を選び、何を上映していくかっていうことについて、いかに自分たちがプロであるかということについて、皆一生懸命に考えてると思います。ほとんどは自主上映やってたんだけれども、いつの間にか映画館やるようになっちゃった連中なんです。

自主上映ではなく、映画館を運営していく、お客さんからお金を頂いて、営業していくっていうことについて、いつも考えてます。そこにプロとアマの境界が明瞭ではないです。明瞭ではないけど、我々はプロを目指していく、つまりお金を頂ける物って何なのだっていうことだと思います。お客さんのために作ってるってよく言いますね。カナザワ映画祭でも神と崇められてるであろう鈴木則文監督が本の中で書いてある一節が、大変好きなんです。それはつまり、お客さんっていうのは誰なのっていうことについて、書いてるんですよ。でも鈴木監督ですから、その文章全体はお客さんとは何者かなんていうような抽象的な文章ではないんです。

それはサラっと書いちゃってるんですよ。それは何かっていうと、自分の映画を、“命の次にお金が大事な人”に観てもらおうと書いてあるんです。つまり、お客さんに命の次に大事なものを置いてってもらえる映画を作るっていう決意ですよ。これはやっぱり凄いな、さすが鈴木監督だなと思いました。それがやっぱりプロですね。つまり観客のプロとは、じゃあ一体誰かというと、映画についてよく知ってるとか、色んな情報を持ってるとかそういう人じゃない。観客のプロは、今置いたお金の価値があったかどうかだけは必ず分かる人なんですね。だから、そういう人たちに向けて頑張って作ってください。応援しております。

小野寺

カナザワ映画祭2017はこれが第一回で、11月まで毎月続いていきます。カナザワ映画祭自体は11年目なんですが、今年が一番大変な年になるんじゃないかと思います。運よく年末まで生き残ったら、来年も「期待の新人監督」をこの場所でやりたいなと思ってます。2011年から「期待の新人監督」をやって、過去最高の22作品上映というクオリティの高い年だったので、皆さん応募していただいて、ありがとうございました。

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