爆音戦争映画

U・ボート ディレクターズ・カット DAS BOOT
U・ボート
1981年/西ドイツ/208min/ビスタ/ドイツ語・日本語字幕
監督・脚本:ウォルフガング・ペーターゼン
音楽:クラウス・ドルディンガー
出演:ユルゲン・プロホノフ、ヘルベルト・グレーネマイヤー、クラウス・ヴェンネマン、ベルント・タウバー、オットー・ザンダー
第二次大戦中のドイツ海軍潜水艦Uボートの熾烈な戦いを描いた作品。敵艦のスクリュー音、ソナー音、爆雷音、限界まで潜行し水圧で艦がきしむ音、そして息を潜める沈黙にいたるまで、優れた「音」使いで極限の緊張状態を演出した。その過剰なまでの緊迫感はほぼホラー映画。巨大な現実を前に、祖国は助けちゃくれない。(解説:戦争映画中央評議会


レッドオクトーバーが原潜ならこちらは第2次大戦中のオールドタイプの潜水艦。汗と油の匂いがする。音もまた同様で、猥雑なパーティ、潜水艦の駆動系の機械音、そして何よりも、潜水時の艦の軋み。乗組員たちにとっては命の軋みともとれるその音を、何度も何度も息をひそめて聴くことになるだろう。[樋口泰人]
フルメタルジャケット FULL METAL JACKET
フルメタルジャケット
1987年/アメリカ/117min/ビスタ/英語・日本語字幕
監督:スタンリー・キューブリック
音楽:ヴィヴィアン・キューブリック
出演:マシュー・モディーン、リー・アーメイ、アダム・ボールドウィン、ビンセント・ドノフリオ
「目玉えぐって頭蓋骨マンコしてやる!」……アメリカ海兵隊が、ベトナム戦争へ向かう新兵に求めたものとは...どんな馬鹿げた命令にも無言で従う殺人マシーン“BORN TO KILL"となることだった。血で血を洗う殺戮の戦場で人間らしさは何の役にも立たなかったのだ。キューブリック特有のブラックユーモアと背筋が凍るような戦慄が混在する、戦争映画史上屈指の名作。(解説:戦争映画中央評議会


先ずは人の声に驚かされる。映画前半のほとんどは、教官の罵声が場内に轟きわたることになるだろう。それですっかりこちらも人格破壊されるはずだ。そこからがこの映画の醍醐味。一旦破壊された人格が聴くのは、どんな音なのか。射撃音や爆発音も、かつて聴いたことのないものになっているに違いない。[樋口泰人]
ブラックホーク・ダウン BLACK HAWK DOWN
ブラックホーク・ダウン
2001年/アメリカ、イギリス/145min/カラー/シネスコ/英語・日本語字幕
監督:リドリー・スコット
音楽:ハンス・ジマー
出演:ジョシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、エリック・バナ、オーランド・ブルーム、トム・サイズモア、サム・シェパード
1993年にソマリアで起きた「モガディシュの戦闘」を描いた作品。アイディード将軍の武装勢力と合衆国タスクフォースの死闘がゲップが出るほど描かれている。その極限の市街地戦闘の表現はある種の到達点に達している。こんな戦争があったなんて、この映画がなければ誰も知らなかっただろう。映画の力を実感できる傑作だ。(解説:戦争映画中央評議会


『地獄の黙示録』の戦闘が長閑にさえ見えるソマリアでの内戦は、限界を超えた忍耐を我々に要求する。そして誰もがこの戦いの無意味さを、激しすぎる銃撃音とロケット砲の爆発音の果ての、住民たちの雄叫びの中に聴き、音によって冴えた視覚の中で、我々の生きる世界の惨状をはっきりと見ることになるだろう。[樋口泰人]
スターシップ・トゥルーパーズ STARSHIP TROOPERS
スターシップ・トゥルーパーズ
1997年/アメリカ/129min/ビスタ/英語・日本語字幕
監督:ポール・バーホーベン
脚本:エド・ニューマイヤー
音楽:ベジル・ポールドゥリス
原作:ロバート・A・ハインライン
出演:キャスパー・ヴァン・ディーン、ディナ・メイヤー、マイケル・アイアンサイド、ジェイク・ビジー
「戦争だ!戦争が始まったぞ!」「奴らが先に仕掛けてきた!」「殺せ!殺せ!殺せ!奴らは虫だ容赦するな!」「臆病者は味方には必要ない!銃殺刑だ!」「敵には慈悲をかけるな!無慈悲な死を!」「空爆だ!空から死を降らせろ!」「核バズーカ砲で奴らの住処を吹きとばせ!」昆虫型エイリアンと戦争状態に入った地球連邦軍の戦いを壮絶に描く超好戦的戦争超大作。この内容をこの大規模な予算で映画として実現出来たのは90年代の奇蹟である。


あの大量の昆虫たちを殺すために何発の銃弾が発射されたことか。とにかく場内が銃弾塗れになることは間違いなし。そして撃つことにも撃たれることにもうんざりした頃に登場するボス昆虫の恐るべきぬめぬめ感。この圧倒的に不快な感触を爆音がさらに増幅する。想像しただけでおぞましく笑いが止まらず。[樋口泰人]